-Vermillion-

 最近、同じ情景でセリフだけが違う、不思議な夢ばかり見る様になった。
 黒い大きなアゲハ蝶が、私に語りかける夢――今日は何て言われるのか。

 澄んだ様な、曇った様な……それでいて高い様な、低い様な……
 何とも言えないけど、とても優しくて温かくて、
 ずっと聞いていたい気持ちになる、不思議な声。

――漆黒の闇の中を、一筋の光が照らしている。
  その光の先で大きな烏アゲハが、道案内をするかの様に舞う。
  そっと手を伸ばすと蝶は指先に止まり、ゆっくりと羽を動かした。  

-いつまで眠り続けるのですか、主様よ。
「ぬしさま…私が…?」
-貴女は既に一度、目覚めたではありませんか。
「何を言って…」
-それなのに貴女は、それを自ら封印したのです。
「目覚め…封印…?」
-仕方ありませんね。では私が、貴女をお迎えに上がりましょう――

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