state of LOVE
「陽彩ができた時言うとったやん?女やったら太一の嫁にって」
「おぉ」
「俺がどんだけ男であってほしいって願ったか」
「恵介…」
「白状するとな、東京行こう言い出したん、りんをお前から引き離したかったからやねん」
「お前…」
「もう何十年も昔の話やけどな。あー。言うてスッキリした」
いつとも同じ笑顔のようで、それはどこかぎこちない。
それでも懸命に笑顔を作るケイさんは、やはりどこまでもハルさんのことが好きなのだろう。
「らしないな。やめようや、こうゆうの」
「せっかくやから言うてまえや」
「ええって、もう」
「そうやって溜め込むからしんどいんちゃうんか」
「んなことないで」
「遠慮すんなや」
俺ら親友なんやろ?と問うハルさんの携帯が、着信を告げた。何と間の悪い…と思ったものの、それがメーシーからのものだと知り、考えを改めた。
「悪い。ちょっと事務所行ってくるわ」
「どうしたんですか?」
「ちょっとトラブルや」
「じゃあ、俺も戻ります」
「すぐ戻るから待っとって。恵介も」
「俺も?」
「すぐ戻る」
そう言い残し、ハルさんは上着も持たずに慌てて店を出てしまった。その背中を見つめながら、聖奈が重いため息を吐く。
「幸せ逃げるぞ」
「またちーちゃんですか」
「自分の母親に妬くな」
「違います」
少しからかっただけのつもりが、どうやら聖奈の怒りセンサーに触れたらしい。プイッと顔を背けられ、それっきり口を利いてもらえなくなった。
「誰に似たんでしょうね、コイツ」
「ちーちゃんやろな」
「そうっすか?」
「そういや、俺らがちーちゃんに会うたん、セナくらいの年の頃やったなー」
満腹になってうとうととし始めた美緒を抱き直し、再び腰を落ち着けるケイさん。
せっかくだから話せと言った本人は不在。ここは俺が…と、少しだけヒーローを気取ってみるのも良いかもしれない。
「おぉ」
「俺がどんだけ男であってほしいって願ったか」
「恵介…」
「白状するとな、東京行こう言い出したん、りんをお前から引き離したかったからやねん」
「お前…」
「もう何十年も昔の話やけどな。あー。言うてスッキリした」
いつとも同じ笑顔のようで、それはどこかぎこちない。
それでも懸命に笑顔を作るケイさんは、やはりどこまでもハルさんのことが好きなのだろう。
「らしないな。やめようや、こうゆうの」
「せっかくやから言うてまえや」
「ええって、もう」
「そうやって溜め込むからしんどいんちゃうんか」
「んなことないで」
「遠慮すんなや」
俺ら親友なんやろ?と問うハルさんの携帯が、着信を告げた。何と間の悪い…と思ったものの、それがメーシーからのものだと知り、考えを改めた。
「悪い。ちょっと事務所行ってくるわ」
「どうしたんですか?」
「ちょっとトラブルや」
「じゃあ、俺も戻ります」
「すぐ戻るから待っとって。恵介も」
「俺も?」
「すぐ戻る」
そう言い残し、ハルさんは上着も持たずに慌てて店を出てしまった。その背中を見つめながら、聖奈が重いため息を吐く。
「幸せ逃げるぞ」
「またちーちゃんですか」
「自分の母親に妬くな」
「違います」
少しからかっただけのつもりが、どうやら聖奈の怒りセンサーに触れたらしい。プイッと顔を背けられ、それっきり口を利いてもらえなくなった。
「誰に似たんでしょうね、コイツ」
「ちーちゃんやろな」
「そうっすか?」
「そういや、俺らがちーちゃんに会うたん、セナくらいの年の頃やったなー」
満腹になってうとうととし始めた美緒を抱き直し、再び腰を落ち着けるケイさん。
せっかくだから話せと言った本人は不在。ここは俺が…と、少しだけヒーローを気取ってみるのも良いかもしれない。