女王のココロを奪うkiss(休載)


グイッと顔が近付き、あたしの心臓がドクンと大きく鳴る。

ドクドクと心音が加速する。

息が苦しい。

薄暗い室内、けれど近い距離で祐斗の顔はしっかりと見える。

顔に熱が集まる。



「今日はこれで終わりにしてやる」



そう言った祐斗はその顔を近付け、唇に柔らかい感触が当たった。

またされてしまった、そう思うと同時に、本当は逃げられたんじゃないか?そうとも思う。



なんであたしは逃げられないのだろう?

どうして反撃出来ないのだろう?

なぜ雰囲気に飲み込まれてしまうんだろう。



それは──。



長いキスを、あたしは受け入れてしまっていたような気がする。

自分の心がわからない。

知る必要があるのかもしれない。

でも知りたくない。



知りたくないのは、なぜだろう?

拒否されることを、恐れて……?



唇が離れ、祐斗がまた柔らかくあたしの頭を撫で、起き上がった。



「また明日、な」

「……帰るの?」

「帰ってほしくない?」



おかしい、なんでこんなに、心が寂しく感じるの。

帰れって言えばいいじゃん。

でもなぜか、言いたくなくなってしまったこの口からは言葉が出ない。
< 57 / 86 >

この作品をシェア

pagetop