君がいるだけで。




誰もいない開き教室に連れてくると、あたしを見て



「藤堂と何かあったのか?」



と、あたしに尋ねた。



千菜が泣く理由なんて
藤堂しかいない、と佐野は
わかっていたのだ。



そんな佐野くんに
あたしはまた、泣き出してしまった。



「あたしが……」



「え……」



「あたしが……悪いっ……の…っ、ヒック」



「…わぁぁぁあっ!泣くな、
泣くな!
大丈夫だから、な?」



優しく背中をさすってくれる佐野くん。


優しい……

佐野くんだって優しい……



――――でも。

“何かが”違う……




「相談くらい聞くから。
ほら、言ってみ?」



「……あのね」




あたしは事の始めから終わりまで包み隠さず、佐野くんに話した。


泣きながらだったから
言葉が聞きづらくなったりしたけど、佐野くんは嫌な顔もしないで全て聞いてくれた。





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