朝子
葬儀
 この人達は、一体いつになったら間違いに気がつくのだろう。

「この度は、本当に残念な……まだお若かったのに」

「朝子ちゃん、気を落とさずにね。しっかりするのよ」

「生前、森本先生には大変良くしていただいて……」

「先生はずいぶん奥さんを自慢に思っていらっしゃいましたよ」

 私は、ろくに返事も返さなかった。

 そんな私を咎める人もいない。

 かえって気遣わしげに励ましの声を掛けたり、堪えられないと言った風情で白いハンカチを目許に押しつけるのだった。

 まったく、なんて滑稽なのだろう。

「森本様、準備が整いました」
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