ピュアらぶストーリー。

「なんや実結ちゃん、幸せそうな顔してんな」


ふと聞いたことのある声に顔をあげると、どや顔の稲瀬くんがいた。

おれはすべて知ってます、みたいな。



「……こんなところでどうしたの?」

「その間はなんや」


稲瀬くんって、鋭いからなんか苦手。



「俺は祝福しにきただけや。実結ちゃん、前俺が言おうとしてたこと覚えてる?」


…?
ああ、確かこれだけは覚えといてほしいとか言ってたやつかな。


「人を好きになることは、つらいことよりも「実結!!」…」


あれ、なんかデジャブ。


「お待たせ!…ってなんで稲瀬がおんねん!!」

「気づくんおっそ。てか、うるさ」

「よし、稲瀬はほっといて帰ろか、実結!」

差し出された手をとって、歩き出す。

稲瀬くんに手をふって、私たちは中庭を後にした。




「人を好きになることは、つらいことよりも幸せな気持ちが勝つんや。…って、もう言わなくてもわかってるか」


稲瀬くんが呟いたのを、私たちは知らない。



はじまりは、ここから。

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