君に逢えたら
第1章

「へったくそだね」

隣にいた友人の小春が言った。

「聞こえるよ、春ちゃん」

川島ゆき、現在高校2年生。
バイトの帰り道である。

駅構内に響き渡るその歌声は確かに下手くそだ。

男子高校生2人組が路上ライブを行っている。

「いや、でも限度ってもんがあるでしよ。」

小春は容赦ない。

「もう。だから、聞こえちゃうよ」

こんな所で歌うくらいだ。

結構なヤンキーに違いない。

ゆきは小春の文句が彼らに聞こえていないか、確かめるようにこっそりと盗み見た。

金髪?茶髪?と思いきや、至って真面目そうな黒髪の男子高校生だった。

意外だなと思っていると、急にボーカルの少年がこちらを見た。

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