pierce,prince
アオイが小さく笑った。
小さくだけど、優しく…
あたしを見て笑った。
自惚れてるだけかなって、
ステージから客席が
見えるわけないよねって
あたしがアオイから
見えてるわけないって
そうは思うけど…
この席のチケットは
葵から貰ったものだった。
葵は、あたしがいる場所
を知っている。
そらされない視線が…
葵が視線の先に捕らえているのは
───‥あたし、だ。
「このピアスには、ちょっと
ワケがあったりするんですよ。」
「ワケ…ですか?」
「まあ確かに、高校卒業したから
あけたってゆうの
強ち間違ってないんですけど…」
葵の視線があたしから
そらされることは、ない。
こんなに客席の一点だけを
見てインタビューなんて
受けてたら怪しまれないかって
あたしが不安になる。
でもそんなの、案外
平気なようで…
記者は気づいていないみたい。
「本当はあける気なんて
全然なかったんだけど…」