ＴＩＭＥ ＷＡＲ

「ねぇ、チャコ何で名前しってるの？」


渉君が私の腕を掴んで近づいてくる。ただ凄く泣きそうな顔で


小さなイスからカタンと音をたてて歩君も立ち上がった


「生徒会長だったから」

生徒会長だったから名前を覚えてても不思議はない。信平とは２階準備室であったなんて言っても信じてもらえなそうだし

あの時の信平はもう意識不明でベッドに横たわってたのだから


「じゃあ、何で呼び捨てなんだよ？そんな親しげに」


あ……。
歩君は鋭い。人の変化に敏感みたいだった
でも幽霊とか呪いとか絶対信じないタイプだと思う


私は口をつぐんだ。
開いてない窓を隠すカーテンが小さく揺れた


ほんの少しの変化に私以外気づいただろうか
病室にまた1人増えている。


「信平？」


いきなり名前を呼んだ私に歩君は怪訝な顔を向ける


信平は横たわってる自分の横に立って渉君と歩君をあの時の冷たい冷たい悲しみがにじみ出ている瞳で交互に見ていた


そうか……
仲が悪くなってしまった兄弟はきっと自分のせいだと思ってるんだよね


笑わないのはそんな罪悪感から？


信平は口をゆっくり動かした。仲直りさせてくれないか？


「仲直り……」


下を向いて次に顔を上げた時にはもう信平はいなかった


「おい、お前さっきから一人で何やってんだよ」

やっぱり私以外には見えてない。死んで無いなら幽霊じゃない


でも……じゃあ何だ


「お前、じゃなくてちやこ」


「は？……」


「渉君、明日２ヶ月前に行こう」


渉君は目を見開いて私が出した時計を見つめた。 歩君は相変わらず怪訝な顔をしてる


「２ヶ月前っていけるわけねーじゃん」


行けるんだよ。
まぁ、現実主義な考えの人は時間を操れる何て考えもしない


また明日、といって私は病室を出た
日が暮れている。暗くなった道を走って家まで帰った


あの二人は私が居なくなった病室で、部屋に物音さえ立てず静かにさせてるんだろうか


口も聞かない兄弟なんて悲しすぎるよ


２ヶ月前、何があったのか……信平の笑顔をみたいし


渉君と歩君には仲直りしてほしい。
ベッドに潜り込んで明日のことを考えた


２０１０年６月１９日天気は雨、時刻９時２５分
「チャコっ」

あっ……
渉君に呼ばれてハっとししたらと車が凄い勢いで通過していった