ストロベリーライン・フォーエヴァー
 案の定、後ろから美咲のヒップを狙っていたフミじいさんの右手が空を切り、「おっとっと」と言いながらフミじいさんが前のめりによろめいた。美咲は後ろから駆け寄り、開いたフミじいさんの股間に右手を伸ばし、がっしりとつかみあげた。
「ギャ!これ、ねえちゃん、若い娘っこがなんて事すんだ?」
「けっ!都会の女をなめんなよ。そんなウブじゃねえよ」
「いてて、こ、こりゃ、痛いがな。先生何とかしてくれ?」
 だが吉川は恥ずかしそうに横に顔をそむけてはいたが、笑いを含んだ口調で冷たく突き放した。
「もう!女の尻ばかり狙う人にはいい薬です。美咲さん、やっちゃいなさい」
 近づいて来た明は腹を抱えて笑い、麻里は不思議そうな表情でしばらく美咲とフミじいさんの様子を見ていたが、やがて大声で言った。
「なんだか分かんないけど……とにかく、おねえちゃん、がんばれ!」
 美咲は不敵な笑顔を浮かべてさらに右手に力をこめた。
「ようし、ではリクエストにお応えして。ほうら、ウリウリ」
「わあ、悪かった、悪かった。だからやめてくれ!ほんとにタマがつぶれる~」
 二時間ほど浜辺で遊んで、一旦吉川の家に戻って休憩を取る事になった。小学校の脇を抜けた時、突然辺り一帯にチャイムの音が異様に大きく響いた。
 美咲は少し驚いて校舎の屋根の上の時計を見上げた。その時計の針は3時19分を指していた。なぜこんな中途半端な時刻にチャイムが鳴るのだろう。当惑した美咲とは対照的に、他の5人は異様なほど冷静な顔つきで、そして何か覚悟を決めたかの様な表情を顔に浮かべていた。
「そう、もうこんな時間なのね」
 吉川がため息のような思い口調で言った。フミじいさんが君枝の手を引きながら言った。
「さて、俺たちはもう行かねえと」
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