シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「玲く~~ん。さっきまで着てた、ティアラ姫のトレーナーとジャージの下に戻しちゃ駄目~~!!?」


試着室のドアが開くなり、芹霞の泣き声がして。


「駄目」


よりによってなんであの"ぶちゃいく"ワンコの柄?

もっと愛あるカレカノのデート気分を味わおうよ?

温度差を感じて悲しくなるじゃないか。


予告なしの"お出かけ"の上、あれから直ぐ出てきたし、僕は背広だし…一応芹霞も、部屋着から着替える気にはなったんだけれど。


「ねえ、玲くん…お願い。ティアラ姫に…」

「駄目」


何でそんなにあのティアラ姫が好きなんだろう?

紫堂本家に泊める際、どんな着替えがいいかと聞いたところ、満面の笑みでリクエストしたのがティアラ姫のトレーナーと、揃いのジャージの下。

癒され、くつろげるらしい。

どんな芹霞も芹霞だからいいといえばそれまでだけれど、だけど今の状況は、くつろぐよりももっと緊張感あるものにして貰いたくて。


僕としてはどうしても、僕と出かける時間を、"特別"に思って貰いたかった。

いつも通りではなく。


「玲くん…」

「駄目」


僕は芹霞の要求を拒絶し続けながら、なかなか試着室から出てこない芹霞の元へ赴いた。


横では店長がにこにこと笑っていて。


「凄く…お似合いですよ、"彼女"」


一礼して促された先の小部屋には…


「!!!!」


可愛い僕の芹霞がいて。

僕の好みで成り立つ、可愛すぎる芹霞がいて。


「~~!!! やっぱり、似合わないから玲くんが顔背けちゃった!!!」


「ち、違っ!!!」


「ふふふ。"彼女"さんがとても可愛すぎるから…ほら、凄く顔が赤く…照れてらっしゃるんですよ」


図星を指された僕の顔は、もう熱くて熱くて仕方がない。


僕は顔を上げられず、ましてやいつものように余裕ぶって微笑むことも出来ず…ただただ顔を伏せたまま、


「すみません、全部下さい…」


それだけをぼそりと…何とか言うことが出来た。


「ええ!!? ええええ!!!? 玲くん、ちょっとぉぉ!!?」

「お買い上げ、ありがとうございます。着ていかれますか?」

「はい…」


僕の気持ちが変わらないようにと、商売上手な店長は…値札を切る為の鋏を持った店員と芹霞を試着室に押し込め、僕をレジに連れて行く。


そして…ふと気付いたんだ。


僕…口座を凍結されているんじゃ!!?


やばい…!!?


< 107 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop