シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「玲く~~ん。さっきまで着てた、ティアラ姫のトレーナーとジャージの下に戻しちゃ駄目~~!!?」
試着室のドアが開くなり、芹霞の泣き声がして。
「駄目」
よりによってなんであの"ぶちゃいく"ワンコの柄?
もっと愛あるカレカノのデート気分を味わおうよ?
温度差を感じて悲しくなるじゃないか。
予告なしの"お出かけ"の上、あれから直ぐ出てきたし、僕は背広だし…一応芹霞も、部屋着から着替える気にはなったんだけれど。
「ねえ、玲くん…お願い。ティアラ姫に…」
「駄目」
何でそんなにあのティアラ姫が好きなんだろう?
紫堂本家に泊める際、どんな着替えがいいかと聞いたところ、満面の笑みでリクエストしたのがティアラ姫のトレーナーと、揃いのジャージの下。
癒され、くつろげるらしい。
どんな芹霞も芹霞だからいいといえばそれまでだけれど、だけど今の状況は、くつろぐよりももっと緊張感あるものにして貰いたくて。
僕としてはどうしても、僕と出かける時間を、"特別"に思って貰いたかった。
いつも通りではなく。
「玲くん…」
「駄目」
僕は芹霞の要求を拒絶し続けながら、なかなか試着室から出てこない芹霞の元へ赴いた。
横では店長がにこにこと笑っていて。
「凄く…お似合いですよ、"彼女"」
一礼して促された先の小部屋には…
「!!!!」
可愛い僕の芹霞がいて。
僕の好みで成り立つ、可愛すぎる芹霞がいて。
「~~!!! やっぱり、似合わないから玲くんが顔背けちゃった!!!」
「ち、違っ!!!」
「ふふふ。"彼女"さんがとても可愛すぎるから…ほら、凄く顔が赤く…照れてらっしゃるんですよ」
図星を指された僕の顔は、もう熱くて熱くて仕方がない。
僕は顔を上げられず、ましてやいつものように余裕ぶって微笑むことも出来ず…ただただ顔を伏せたまま、
「すみません、全部下さい…」
それだけをぼそりと…何とか言うことが出来た。
「ええ!!? ええええ!!!? 玲くん、ちょっとぉぉ!!?」
「お買い上げ、ありがとうございます。着ていかれますか?」
「はい…」
僕の気持ちが変わらないようにと、商売上手な店長は…値札を切る為の鋏を持った店員と芹霞を試着室に押し込め、僕をレジに連れて行く。
そして…ふと気付いたんだ。
僕…口座を凍結されているんじゃ!!?
やばい…!!?