シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「玲くん、こっち見て、声を聞いてッッッ!!!」


屍が壁となり、あたしの声は吸収されてしまう。


すぐにでも飛んで行きたいのに、行き着けない。


それはあたしだけではない。


屍に取り囲まれているあたし達は、その大量さに阻まれて、身動き取れない状態にまで追い詰められていた。

「何で…こいつらまで増えるんだよ!!! 報道陣やスクリーンと同じ原理か!!!?」


久遠があたしを片手で抱き、鎌を振るいながら叫んだ。


そう。


旭くんも凜ちゃんも頑張って屍を倒しているけれど、屍の数は増えるばかりだったんだ。

まるで増殖しているかのように、際限なく。


玲くんはすぐそこなのに。

玲くんは居るのに!!!


もどかしい!!!


炎は大きくなり…

火の勢はこちらにも向かってきて。


上空には火の粉。


逃げ場がない。

このままだと…

屍に火が移り、あたし達まで燃えてしまう!!!



久遠が上着を脱いで、火種を振り払おうとした時、


ぐああああああ!!!


「…え?」


突如、屍が呻いた声を出して揺らいだんだ。


無表情の…崩れた顔に浮かぶのは"怯え"。

恐怖の体現。


そして…

あたし達から遠ざかったんだ。


まるで…炎を恐れて逃げるかのように。


集団が…散っていく。

あたし達は…呆気にとられて立ち竦んでいて。


その時。


バリンと…

何かが割れるような音が聞こえた。


まるで、硝子が割れる音のような…。


「どうした、せり!!!?」

「音が…硝子が割れるような…」

「音なんて聞こえないぞ!!? 大丈夫か!!?」

『旭も聞こえない。せりかちゃん大丈夫?』


あたしを心配そうに覗き込む久遠と王子様。


突如…視界に影が出来た。


闇空を仰ぎ見れば――

空に何かが横切っていた。


暗澹たる漆黒に映える――

汚れた黄色。


ひらひらと襤褸布の端を風に靡かせ、

垣間見えたその横顔は仮面に覆われていて。


「黄色い外套男!!!?」


それが真っ直ぐ、

玲くんに向ったんだ。

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