シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「"クマ"とやらは何処にいる?」


久遠は、三沢さんを知っているのだろうか。

その名称を知るということは、芹霞も三沢さんと会っていたのだろうか。


その割には…旭のことしか言ってなかった気がするけど。


「三沢さんなら、プログラム補佐をお願いしたから、今機械室に…」

「ああ、あの男なら今風呂だ。毛に"柿ピー"が埋まっていて、動くと撒き散らして汚いから、風呂で綺麗にしろと私が無理矢理案内した」


蓮が言った。


三沢さん…柿ピーがっついていたからね…。

焼き肉弁当、芹霞の分も食べたのに…お腹減ったんだ。

あれ、かなりのボリュームだったはずなんだけど。


僕まだ胸悪いや…。


「此処に顔を出すように、言ってくる」



お風呂は隣だから、蓮はすぐ戻って来て。



「もぬけの空だ。あがったんだろう。では機械室に行って…」


久遠が立ち上がった。


「場所を機械室に映す。調べたい資料もある」


僕達の返事も聞かずに、久遠はすたすたと歩き始めた。

僕達も必然と移動することになる。


横に芹霞が並ぶ。


「ねえ、芹…」


声をかけようとしたら、芹霞は僕からすっと擦抜けて…櫂の元に行った。


女装しているとはいえ、櫂と芹霞の2ショット。


その背中を見ている僕は、嫉妬に心が焦げ付きそうで。


笑顔を向ける芹霞。

照れたように口を尖らせる櫂。


そして芹霞はぱたぱたと走って、


「由香ちゃん、蓮!!! あのさ…」


僕なんか…目に入っていない。


振り返りもしない。



僕は…握った拳を更に力を込めた。


心臓の動きが乱れ、苦しい。


きつい。


この状況は…

僕にはきつすぎる。


叫んで…肌を掻き毟りたくなる衝動。


僕は此処にいるのに。

芹霞を想って見つめているのに!!!


イマダレヲオモッテイルノ?


嫌だ。

嫌だ。


ボクヲミロ!!


このまま――

自然消滅なんてさせるものか。


なかったことになんて、させやしない。

絶対に!!!
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