シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「え? 待って、何でそんな話になるの!!? 久涅、ちょっと落ち着いて? 仮にも兄弟なんだよ!!? 何でそんな物騒な話になるのよ!!!?」


あたしは久涅を突き飛ばすようにして身体を離しながら、くるりと向きを変え、真っ正面から叫んだ。


「血が繋がらない人達もそうだけれど、血が繋がるのなら特に!!! 殺し合いをしゃ駄目なの!!! 禁忌(タブー)なの常識でしょ!!!?」

断固抗議の構えだ。


「血が繋がる者達は殺し合わない…所詮それは、種の絶滅を防ぎ繁栄を保持する為に掲げた、道徳的規制。マスコミ操作による文化的規範。"刷り込み"だ。

実際の処、どの部分が禁忌(タブー)にあたるか、誰も判ってはいない。

禁忌(タブー)を創り出したのは、そんな人間達だ」


久涅は滔々と話す。


「確かに社会の大部分は、そうした心理的規範(ルール)に守られている。だがその実、判らぬだけでそれが平気で行われているのもあるんだ。

紫堂財閥がそう。強い者が生き残る為に、弱者は必要ない。弱者を屠ることにより、紫堂は大きくなった。

淘汰して大きくした…そんな親父の血を、俺も櫂も引き継いでいる。

親父がどれだけ多くの縁者を闇に葬ったのか…櫂、お前が知らないわけはないだろう」


紫堂櫂は黙ったままで。


「だけど、兄弟で殺し合うことはしてはいけないことだ!!! それは回避すべきものだよ!!!」


あたしがそう言うと…


「親父だって堂々としている。

実の兄をその手で殺した。

俺達は…兄弟殺しの血を引いている」


紫堂櫂が驚いた顔をした。

血を引く…云々じゃない。


"実の兄をその手で殺した"


つまりそれは――

玲くんのお父さんを、

現当主が殺したと言うこと?



「玲は…父親を殺した男に傅(かしづ)いている。

そして玲をねじ伏せ、手懐けたお前は、その息子だ。

此程…屈辱的な人生もあるまい」



「そのこと…玲は…」

「さあ、どうかな」


くつくつ、くつくつ。



玲くん…!!!
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