シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・恐懼 玲Side

 玲side
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芹霞の中から――

櫂の記憶を消した罪悪感。


いつ芹霞の記憶が蘇るか判らない懼れ。


不安が大きくなって重くなりすぎて、僕の心はより狭量となる。


喘ぐような…絶え絶えな息しか出来なくなった僕は、芹霞の視界から…僕以外の男を全て消し去りたくて仕方が無かった。


例え三沢さんにそんな気がないとしても、芹霞に…僕以外の男に関する興味を持たせたくなかった。


櫂が現われてから、芹霞の態度が変化した現実を思えば、どう考えてみても…芹霞の心は僕にはなく。


だからせめて…緊急措置的に他の男を排除した環境で、少しでも僕に向かう心を取り戻したいと…僕は、芹霞の手を握ったんだ。


触れずにはいられなかった。

これ以上、僕の痕跡を消したくなかったから。


僕は此処だよ?

僕を忘れないで?


例え"お試し"であろうとも…

僕を彼氏として愛して?


僕を"男"と意識して?


その想いは、芹霞に拒まれて。


いつもと違うんだ。

僕をとことん離そうとする。


哀しくて苦しくて、仕方が無かった。

その場で叫びだしたかった。


どんなに力で押さえ込もうとも、芹霞が抵抗しているという現実が…僕の心により深く突き刺さって。


どうして?


ねえ…

今まで拒まなかったじゃないか。


どんなに愛を込めて、離さないという決意を見せても…芹霞は僕を嫌がるようにして離れようとして。


ボクハカイノカワリニモナラナイノ?


久遠の冷ややかな瑠璃の瞳が向けられている。

久遠の目に、僕はどう映っているだろう。


滑稽?

醜悪?


芹霞の記憶がないことをいいことに、櫂の気持ちをよく知っていながら、こうして手を出そうとする僕。


芹霞に此処まで拒まれて、だけど手を離せず縋り付く僕は。


きっと最悪に属する男なんだろう。

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