シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・刻限 桜Side

 桜Side
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「玲くん…お話があるの」


そんな芹霞さんの声を耳にして、最後尾に居た私は足を止めた。


「桜?」


私は煌を促して、先に櫂様と階下に行くように告げた。


櫂様と煌には…聞かせたくない話のような気がしたから。


訝しげな顔をした煌と、びくりと身体を震わせた櫂様。

櫂様に芹霞さんの思いつめたような声が聞こえたかどうかは判らない。

しかし、今触れてはいけないような話題の気がして、私はこの会話そのものを遠ざけたかった。


それに…きっと櫂様も気づかれたのだ。


「…お前もすぐに来い」


それだけを口にした櫂様は、陰鬱な表情で煌と共に階段を下りていった。


私は…どうしても櫂様と玲様のことが気になって仕方がなかった。


玲様の恋心が櫂様を傷つけるのなら、

櫂様の恋心は玲様を傷つける。


表裏一体の彼らの関係は、ただの従兄弟で留まらないのかもしれない。

紫堂が隠している何かがあるのが判っていて、今こそ団結しないといけない状況下…櫂様と玲様の心は乖離している。

本心は向き合いたいのに、だけど向き合えないお2人。


地盤ががたがたに崩れている櫂様にとって、心ががたがたに崩れた玲様にとって…多分、私や煌の存在だけが、2人の繋ぎとなる重要な…要のような気がするから。


ああ、だけど。


そんな理屈めいたことを言っても、

きっと私自身が気になるのだろう。


「今、それ処じゃないこと、雰囲気的に判るけれど。だけど…これだけは、"お試し"のことを曖昧にしたくないの」


"お試し"の帰結を。
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