シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「ねえ――」


その時、芹霞から声がした。


「玲くんに対する散々のその罵詈雑言。出てきた"お試し"から推測するに…娘ってあたしのこと?」


それ以外に、誰が居るっていうの?


必死に振り向かせたい相手は、

君以外に誰が居るっていうの?


「それ以外に、玲は誰と"お試し"とやらをしているのだ?」


久涅が…代弁してくれたのは複雑な気分だった。


「だったら!!! 何で玲くんがフラれているっていう言い方するの!!!? 

玲くんは…素敵な人だよ!!??

誰が玲くんをフるって!!!?」


「は?」


当主が訝しげな声を出す。



カラーン。



「フラれたのはあたし!!!

こんなこと言わせないでよ!!!

玲くんはね、好きな人がいるんだから!!!

何も知らないのに、好き勝手なこと言わないで!!!」



「は?」



僕から、変な声が出た。


好きな人って誰のこと?

僕…二股なんてかけていないよ?



カラーン。



「玲、お前…その娘以外にも…」


「違いますッッッ!!!」


当主の冷ややかな問いに、即座に否定した。


ありえない。

僕が芹霞以外の女を…いつ好きになったって?


「芹霞!! 何を勘違いしているか判らないけれど…僕は…」


「いいよ、玲くん。玲くんは…凜ちゃんが好きなこと、あたし判っているし。

だけど久遠のことは恨まないでね。久遠だって悪気があるわけじゃ…んーんー!!!」


風が吹いた…と思ったら、久遠が芹霞の口を手で覆ったらしい。


久遠の体は大丈夫なんだろうか。


爆発と同時に倒れた久遠。


それは魔方陣への刺激が起因なんだろう。

そこまで久遠と魔方陣は、密接な関係があったんだ。


魔方陣を壊す黒い塔だと見抜いていたならば――

まだ先に手の打ちようもあったものを。


久遠まで道具に使わせたくない。


そうは思うけれど…

この時の僕の頭には、芹霞の言葉が強く回っていて。


凜…だって?


更におかしなことを言っていなかったか?


何でそこに久遠が…関係する?



「はははははは!!」



大笑いを始めたのは久涅だった。


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