シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「緋狭姉に会ったのか!!?

緋狭姉は無事なのか!!!?」


それは――

櫂が屋敷で寝て、魘(うな)されていた時か。


それ以外、櫂が深層に沈み込める場面はなかったはずで。



「ああ、今の処はな」


もしかして緋狭姉…

櫂がこうなることを見越して…

助けようとして、深層に沈んだままだったんじゃねえか?


何だか…そんな気がしたんだ。



「ただ――


"ふさふさ"と"わさわさ"が増えれば…

緋狭さんがどうなるか判らない」


そんなことを櫂が口にして。


「な、何だよ…その…

"ふさふさ"と"わさわさ"だとかは!!?」


そう言えば、緋狭姉もそんなことを言っていた。


「さあ? とりあえず…"無意識"の底辺が人間共通であるのなら、沈めばまた緋狭さんには会える。助けられる。

だが拒まれた」


"今は還るべき時ではない"


「はあああ!!!?」


「ああ、煌。お前にも迷惑かけたな。傷…」


「んなもの放っておけば治るからいいんだけどよ、緋狭姉…」


「大丈夫。こっちの手筈は整っている。久遠はどうだ?」


久遠は相変わらず紅紫色の瞳のまま、櫂に背を向けていて。



「判ったんだろう、緋狭さんを助ける…

"時間を逆転する"方法…」



久遠は答えず…蓮の名前を呼んだ。



「こちらは大丈夫です、久遠様」



何だ、一体何だ!!?

俺の知らない…裏で2人共何をしてたんだ?



「桜」


「はい、こちらも大丈夫です、櫂様」



お前まで、何か知ってるのかよ!!!?



「煌」



櫂が俺を見た。


俺にも説明してくれるのかと、わくわくして見つめたら。



「………。そんな期待に満ちた目をさせて悪いが、お前を理解させる時間がないから説明は省いて、用件だけ言う」


何だよ、それ…。

がくっと俺は項垂れる。



「煌、俺と共に――」



そして櫂は、言ったんだ。




「俺と共に死んで貰う」




――と。




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