シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・始動

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やばい。


W(ダブル)の攻撃で鼻血吹きそう。


S.S.Aの雰囲気と玲くんの"ベタ甘"にやられて、あたし…息絶えてしまうかもしれない。


此処まで、玲くんが"べたべた&ちゅっちゅ"で触れてくるとは思っていなかったし、何より世間知らずで"現代の恋人の真実の姿"というものを知らなかった…恋人いない歴=年齢のあたしは、S.S.Aの"イチャイチャ"ぶりに度肝を抜かれ、頭がパンク寸前。


人前で此処まで披露していいんだろうか。

プライバシー意識は何処にいっちゃったんだろうか。

大和撫子諸君、羞恥心は何処行った?


更に玲くん。


礼節弁(わきま)えた優雅な常識人なのに。

次期当主として有名になっているのに。

こんなにこんなに端麗な王子様なのに。

更には今まで"恋愛淡泊"を公言していたのに。


べたべた&ちゅっちゅが止まらない。


蜜よりも濃度の濃そうな"とろり"とした鳶色の瞳を向けられ、蕩けるような顔でにっこり甘く…極上に微笑まれれば、それでなくとも語彙力のない脳内変換文字が"玲くん"だけになって、それ以外が考えられなくなってくる。


ああ、あたしの…風化寸前だった粉末状の脳味噌が、玲くんの"とろり"の蜜とピンク色が混ぜられ、妖しく液状化して逆流してきそうだ。


もうあたしの念仏も大した効果を持たなくなってしまい、いつでも鼻血が待機状態になっている。


『神崎芹霞は、紫堂玲のことを【優しい家族】の一員ではなく、自分を愛する1人の男として強く意識し、恋愛対象として真剣に考え、この"お試し"では本当の恋人のように愛し愛されることを誓います』


あれが呪文のように頭にぐるぐる回るんだ。


まるで久遠の…言霊って奴だ。


此処までぐるぐる回ると――


玲くんは本当に"自分を愛する1人の男"で、

べたべた&ちゅっちゅ&とろりにやられたあたしの脳内ぐだぐだ感は、"恋愛対象として真剣に考え"ているからで、

どんなに意識しても玲くんを避けることすら出来ない…逃げ道を塞がれたあたしは、"本当の恋人のように愛し愛される"状況にあるんだって思ってしまう。
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