シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「芹霞、僕を見て!!?」


玲くんに揺さぶられて、声は消えた。


「芹霞!!?」


代わりに…か細く掠れた玲くんの声が聞こえてくる。

心配気な玲くんの声が。


あたしの手の平には冷たいバングル。

欠けてしまったプレゼント。


込めた心が消えてなくなる前に、あたしは告げた。

バングルには罪はないから。


これは、玲くんの贈り物だったと。

あたしの精一杯の贈り物だったと。



息を呑む声が聞こえた。

玲くんの震えが、空気に伝わった。


「芹霞…ごめんね、ごめん。本当にごめんッッ!!! …何も知らなくて、僕が勝手に妬いてたんだ。ごめんね、許して欲しい。芹霞からのプレゼントなのに…ごめんなさい」


玲くんの震えた謝罪の言葉が頭に巡る。

その声から逃れるように…肌を蠢く何かが、奇妙な掻痒感を植えつける。


五感が麻痺した感覚。


今ならあの曲も耳に届かない。


倦怠感にまどろみそうだ。


疲れた。

寝たい。


ぐっすりと眠れば、きっと元気になれるだろう。


何でこんなに疲れてるんだろう。

楽しく外出、していたはずだったのに。


早く終わらせたい。

玲くんとの"お試し"を。


そうすればきっと、玲くんとも元に戻れるよね?


「好きだよ、芹霞…」


何で泣いているんだろう、玲くん。


「笑ってよ、芹霞。さっきまで…笑ってくれてたじゃないか。ねえ…また、可愛く僕に…"玲くん"って笑って?」


次期当主なのに、泣き虫だな…。


――あんた、泣き虫だね?


昔のあたしが笑っている。


誰に?


「芹霞…まだ終わってない、終わってないんだ!!! まだ結論づけないで。まだ僕を傍に置いてよ…」


――…ちゃあああん!!!



「僕の恋を、壊さないでくれッッ!!」



泣いているのは――誰?



ゴロゴロゴロ…


遠くで雷の音。


嵐が始動する合図のように。



ぽたんと空から落ちてきた滴は…

まるで涙のようだと――

ぼんやりと思った。

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