シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
そんな時人の波に押され、芹霞は隣室に流された。
視界に届く場所だし、すぐ戻ってくるからという芹霞の声に安心して、その隙に僕は…ペアリングを選んでいたんだ。
値段なんてどうでもよかった。
此の際、忌々しい青いカードを思う存分使ってやる。
とにかく今この時に、芹霞と恋人の"証"が手に入ればそれでいい。
僕を意識して貰えている大事なこの時を、形に残したかったんだ。
僕が選んだ数タイプを、芹霞に選んで貰おう。
だけど芹霞が帰ってこなくて。
何かあったのではないかと心配になった僕は、隣室に迎えに行ったんだ。
芹霞は居た。
真剣に…ショーケースを覗いていた。
何か…気に入ったものがあったみたいだ。
一緒にプレゼントしてあげようか。
僕の足を止めさせたのは、そこが"紳士用"だということに気づいたから。
突如心に不安が過ぎる。
それでなくとも、青色に毒されて余裕がなかった僕の心は、悪い方へとその思考を傾かせた。
誰のものを選んでいるの?
誰を思い描いているの?
芹霞は、店員に何かを言われて真っ赤になりながら財布を取り出していた。
店員を待っている間も、赤い顔の火照りを冷ますかのように、軽く頬をぱんぱん叩いていて。
…恋するような乙女の顔に思えた。
誰に買ったの?
ねえ…僕?
…僕以外?
店員から笑顔で包みを受け取った芹霞。
立ち竦む僕には気づかず、懸命に袋に何かをしている。
僕に気づかないのは…その行為に没頭しているから?
それとも…
違う誰かを考えているから?