シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
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「玲くん、何処!!?」


泣きたくなってきた。


玲くんにバングルを投げつけられて悲しい思いをしたのは事実。

もう考えるのは嫌で、早く帰りたいと思っていたのも事実。


だけど眠気が薄れてきたら…

玲くんが居ないこの状況で色々自省してみたら・・・


思い出すのは、玲くんの泣き顔と震えた声。

無理やりに笑おうとするその顔で。


そんな顔…いつものあたしなら絶対許していなかった。


――買ってあげるから。

――いらないよ、そんなもの。


正反対の姿であたしの心に鬩(せめ)ぎあう…そんな玲くんの姿に惑いながらも、どちらかを信じろというのなら。


あたしの結論は――

泣きながら笑う…どう思ってみても"氷の次期当主"たりえない…我慢してばかりの、いつもの優しい玲くんの姿だった。


――買ってあげるから。

――いらないよ、そんなもの。


何か…理由があったのだろうか。


それすらちゃんと確認せずに、あたしは勝手に驚き傷つき逃げてばかりで。


玲くんが泣いていたのは…傷ついたから?

あたしが泣かせてしまったの?


凄く心が…張り裂けそうに痛くなる。


どうして走って逃げて…精神まで"睡眠"に逃避して、自分のことばかり考えてしまったのだろう。


もしも可能なら、時を巻き戻して…

玲くんに泣き笑いをさせてしまう流れを変えたい。


今からでも修復は間に合うのだろうか。

いや、間に合わせないといけない。


もっと話をしないといけない。


"お試し"を終えれば全て上手くいくなんて、そんなのは甘い…ただの"逃げ"。


問題を先延ばしにしただけ。


時間が経てば絶つ程、関係はこじれるなんて…すぐ気付けたはずなのに。


玲くんを失いたくないと思うのなら、玲くんと殴り合いの喧嘩をしてでも、ちゃんと理解しあうことが必要だったんだ。

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