シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


白い細やかなそれは、まるで雪崩のように床に流れ落ちる。


それはいつか見たような光景。


溢れた蛆が…やがて共食いを始めて、半透明な蚕となり、むくむくと大きく膨らんで。


その窄んだ尖端を、びちびちと床に叩きつけて。


気味が悪い…暗黒の生物。


これを…。

これを叩き切れるのは……。


煌は…自らを襲いかかるそれを、慌てもせず…至って冷静に払い落として…蚕を偃月刀で突き刺したんだ。


飛び散る…黄色い汚濁液。



「これはまさか…玲様に似せた使い魔、

式神だったのか――?」



「よかった~。本物じゃなくて良かった~」


芹霞さんは涙を流して喜んでいて。


「まさか…芹霞さん…」


「こ、根拠なかったから…ひ、100%の自信はなかったけど。ほ、ほら…結果オーライ?」


「もし結果オーライじゃなかったら、どうするんですか!!? 僕は貴方の言葉を信じたんですよ!!?」


「ひえええ!!? ごめん、ごめん。だけどほら、あたしの…玲くんへの愛情は本物だということで」


私の…心が曇る。


「どういう…意味ですか、それは」


「え? 実は今、玲くんと"お試し"してる最中で…」


"お試し"


それは本物の恋人関係になるための…玲様にとっての切り札なはずで。


玲様。


――紫堂櫂を愛してる!!!


何故、櫂様の居ぬ…こんな時期に!!?


――芹霞が、坊の記憶を無くした。


「……。芹霞さん、櫂様のことを覚えてますか?」


私は震える声で訊いてみた。


「??? 玲くんの前の次期当主だった人? ああ、桜ちゃんも煌も、その人に仕えていたんだっけ?」


私は、櫂様の想いを思って…泣きそうになった。




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