シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「……よ」


それまで一言も発しなかった煌の口から、何か言葉が漏れている。


芹霞はその言葉如何により、いつでも…このまま続行可能な高い位置で、振り上げた手を宙で止めている。


煌が…ぶち切れたのか?

此処からではよく判らない。



僕も桜も、万が一に備えて身構えた。



「………れよ」



俯いている煌の髪の毛が、言葉に呼応するように…微細に揺れた。



そして――




「許してくれ、俺が悪かった!!!




――緋狭姉ッッッッッ!!!!!」




そして橙色の大男は――


その場で頭を抱えて土下座の態勢に入った。



ガタガタガタガタ…。



「緋狭姉――

――許してくれッッッ!!!!」



恐怖に掠れきった…煌の命の懇願。



小刻みに身体を震わす姿は。

まるで子犬…チワワあたりが萎縮したようなその姿は。



紛れなく――


純なる極度の"恐怖"を体現していた。



煌にそこまでの"恐怖"を植え付けたのは、

薬による効果だったのかどうか――


僕は判らない。



だけど判ることは。


やはり、緋狭さんは煌にとっては"最大恐怖"の対象で。

そして、芹霞はそんな緋狭さんの妹で。


僕…芹霞にこんなことをされたら、


多分――立ち直れない。


だけどそれで愛情が薄れるかどうかは、

別次元の話…だけどね。


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