シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「遺伝子はDNAの…人間の体を作るタンパク質の"設計図"を読み取るようなもの…え? 初めて聞いた? "二重螺旋構造"とか、"塩基配列"…アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)も…聞いたことない…んだ。

ああ、そうだね。判らないね。前回の生物のテスト範囲だと思ったのは、きっと僕の勘違いだ。ああ、いいよ。気にしないで? スルーしていいよ?

簡単にしようね。例えば僕の遺伝子が突然変異して、僕を構成する遺伝子情報が変わろうとも…外面上僕が僕で、社会の中での役目を今まで通り果たしているのなら、僕の変化に誰も気づかないのと同じということだ」


「ほほう」


芹霞がぽんと手を叩いた。


「電気を構成している"0"と"1"が、虚数である"i"に変わろうとも…電気としての主たる機能を失わずにいるのだとすれぱ、構成分子がどうであろうと関係ないこと。

つまり――

偽たる"i"が、"0"と"1"を模倣して真になりえるということさ。この…僕達の住む現実世界でも」


「何でだろう。電気は電気として機能しているのなら、別に虚数に変えなくてもいいのに」


「それが…判らないんだよね。虚数の必要性…。特殊なのは判るけど、未知数すぎて具体的な予測が出来ないし…」


電脳世界においても、現実世界においても。

何で虚数が増えているのか。

虚数というもの自体の意味合い自体、不透明で。


「…特殊といえば…

なあ…『白き稲妻』。

"万年筆"は関係ないのか?」


唐突に三沢さんが言った。


「お前さん、あのおかしな万年筆に…"特殊な音"という周波数を与えれば爆発すると言うことを見越していたようだが、周波数とは電波。音もまた電波と考えれば、"あの音"も"虚数"だとかいうのと同じように、電導性をもつ"特殊"なものには違いない」


S.S.Aのことを思い出す。


"0"と"1"の…通常通りの僕の力は、あの万年筆ではただの青い光による"溶融"の力となり…それが爆発する際には"虚数"が必要で。


APEXにおいて――

Zodiacから抜き出した"音"が"虚数"故に、爆発を誘発したと考えて。


"0"と"1"の力に、"虚数"を与えることによって電磁パルス(EMP)となり、爆発することが出来るというのなら。


電脳世界に爆発の痕跡がなかったのを思い返せば、電脳世界の特殊性云々よりも…爆発を可能にするのは、万年筆のような気がする。


万年筆は、爆発効果を高める為の"触媒"?


「"0"と"1"を凌駕する為というより、爆発させる為の…虚数…?」
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