シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

ああ――

此処までか。


僕は目をつぶった。


芹霞は逃げられただろうか。

安全な場所に居るだろうか。



やけに時間の流れが低速度(スローモーション)に思えた。


まるで静止しているかのような時の流れ。


最期の…流れなんだろうか。


頼む。


三沢さん、芹霞を生かしてくれ。


煌、桜。


僕の私情を優先させてごめん。


もう僕のことはいいから――

芹霞を守ってやってくれ。


僕の代わりに――。


どうか芹霞を!!!


櫂…。


此処までだ。


此処までが僕の限界。


櫂…。


どうか…戻って来てくれ。


お前は皆の心の要。


芹霞に愛された唯一の男。


櫂…。


お前は僕の…


自慢の従弟だ。


負けるな。


僕のように…

負けるんじゃない。


芹霞を残すな。


『玲くん…』


芹霞。



『玲くん…?』



芹霞。



「きっちりと――

お送りいたしますわ」



芹霞。


『ねえ…玲くん…』


芹霞。


爆風が僕の髪を揺らす。


『玲くんってば…』



ああ…

君の声が聞こえるよ…。


君の…少し怒ったような声が。


可愛いね…。


可愛い声に包まれて僕は…。


< 772 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop