シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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「皆さ~ん、此処がショッピング街で~す。国内外の有名ブランドも取りそろえていまして、此処だけの限定品もあるんですよ~」


一行がショッピング街に進んだ時、若林アナは中継した。


番組元であるTBSは歩きながらカメラを回しているが、他局は久涅が指示するまで、カメラを回さないように言われている。


TBSの番組独占権を守る為だとかそれらしいことを言っていたが…果たしてそうなのか。


久涅が指し示した場所の1つがショッピング街付近。


当然、何らかの店の紹介だと…若林アナは先に話を振ったのだ。


新装開店した"アレス=イオア"を始め、元々の中継計画に紹介予定があった為、殊更そう強く思い込んでいたんだろう。


若林アナは元気よく話し始めたが、その目の前を久涅が通過する。


続く久遠も、クラウン王子も。


彼女を完全無視。


人で溢れかえっている、"アレス=イオア"をも完全無視。


すたすたと歩き続けるだけ。


それを目で追ったアナは


「ええと…か、いえ紫堂さん~」


と引き攣った顔を無理矢理笑顔にして手を振り、走って追いかけて来て。


各務と言わずに紫堂と言えただけ、学習能力はあるのだろう。


「紹介はショッピングではなく…KANANミステリーツアーだ」


久涅はそういうと、にやりと歪な笑いを浮かべた。


ミステリーツアー?


また…とってつけたような。


「此処に来れば判る"ありふれているもの"の紹介よりは、KANANに"隠された""謎"の紹介の方が面白いと思うのだが?」


"隠された"

"謎"


それは確かに、惹き付けられる言葉だ。


五皇のこと、黄幡家のこと、氷皇のデータ…久涅に隠匿すべきものは、全て機械室にある。


その機械室に寄らぬというのなら、謎など何もない。


何より、俺が設計図を見ながらこの遊園地を作った。


久涅に知られて困る要素は何も無い。


しかし――

腕を組んだ毛皮男は、剣呑な瑠璃色の瞳を久涅に向けて。


まさか、俺に内緒で何かをしていたのか?

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