シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
更には――
溢れ返る蛆が共食いを始めて…大きな蚕になっていく。
最悪だ。
その中で、ただ1つよかったことは…
久遠の鎌も蚕を斬れるということ。
鋭利な刃で、びくびくと脈動する巨大蚕を切り裂けば、黄色い汚濁液を迸(ほとばし)らせて、形にならないモノが液状化して消え去る。
結局これは何かは判らないけれど…
放って置いたら不味いモノだ。
つまり久遠は、首を刎ね、蚕を斬り、スクリーンを裂き。
それを延々と繰り返している。
俺は、防御の術をかけられた"クラウン王子"と久遠の傍に居るだけで。
何をするでもなく、久遠に蛆が飛び散らないよう…ただクラウン王子の守護下にいるだけで。
それが情けなくて仕方が無く。
俺の無力さが忍びがたく。
俺は久遠の肩を叩いた。
我慢出来ない。
俺もやる。
「お前が力を使えば、バレるだろうが!!! 頭を使え!!!」
こんな状況においても、久遠は取り乱すことはなかった。
ふさふさの毛を揺らして、まるで神楽でも舞っているかのように神々しく。
行いは残虐と形容できるモノで、瘴気に塗れているというのに。
久遠という誇り高い孤高の精神性が、堕落さを打ち消すのか。
遊蕩三昧の自堕落な生活をしているのに、邪に触れれば聖を放つ。
二律背反の複雑さを持ちながら、それが久遠だと思えるこの不思議さ。
擁護する気はないけれど――
性格に多々問題点はあるけれど――
久遠は、此の地に埋めて終わらせてしまうには惜しすぎる。