シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
それを思い出した時、僕の心は引き裂かれそうになった。


僕は今、何をしているのだと。


櫂を傷つけることをしているだけではなく、僕は櫂を殺そうとしているのかと。


違う、違うんだ!!!


僕は…芹霞の中の想いの再生を恐れていて。

だから櫂と引き合わせたくなくて。


ソレガカイヲコロスコトニナッテモ?


――"約束の地(カナン)"に行こう。


そう行った時、芹霞が微かに微笑んだ気がした。

それを見た僕の心は、苦しくなって。


櫂に会える悦びを感じているのか?

櫂への愛は忘れていないのか?


――うん。久遠が心配だからね。


シンパイスルノハクオンダケ?


震える身体を気づかれないようにして、


――そうだね、心配だからね。


僕は笑う。

微笑み続ける。


「大丈夫だよ、玲くん。玲くんが行けば、きっと…」


芹霞が僕を勇気づけるように笑って、そっと…僕を抱きしめた。


違うよ。

不安なのは君の心。


もう僕には、まるで戻ってこないのかと思えば。

もう決定的になってしまうのかと思えば。



優しい優しい芹霞の…温かな温もり。

柔らかな芹霞の嫋やかな身体。


僕の中にすっぽり埋まる小さな身体は、こんなに僕に馴染んでいるというのに。


僕は芹霞の心を手に入れられない。


欲しいのに。

こんなに芹霞が欲しくて堪らないのに。


まだ…僕は頑張りたいのに。



――芹霞…僕が好き?


そう聞けばきっといつも通り…


――うん。あたしは玲くんが好き。


そう返ってくる。


そう。いつも通り…。

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