シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・決意3 玲Side

 玲Side
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紫堂本家は、東京赤坂にある。


東京の鬼門…凶気を受ける為に構えられた。


東京を…日本を守るというのは聞えはいいけれど、結局は東京の最高権力者たる元老院の盾となる為だけのこと。


日本古来の伝統を受け継ぐような和風の家を構えて、だけど内装は洋風で。


本音と建て前がちぐはぐな紫堂本家。


異能力者の烏合の衆たる紫堂は、元々統一性がとられてはいなかった。


力こそ全て。


紫堂と名乗った者が一番強かったから…それ故に当主の座を認められた。


ただそれだけの集まり。


元老院にとってはただの玩具。


紫堂は、いつだって元老院というものの捨て駒扱いだった。


かつて僕は、その紫堂の勢力を少しでも大きくしようと邁進し、そして櫂は、元老院の息がかかった紫堂の立ち位置自体を変えようとした。


紫堂に身を捧げる次期当主として、僕と櫂とは初めからスタンスが違った。


僕は与えられたものの中で変えようとし、櫂は与えられないものに変えようとした。


保守派と革新派。


8年前、そうした2つの派閥が紫堂を分断し…そして櫂の革新派が力を持つに至ったけれど、現在…紫堂内部の情勢はどうなのだろう。


形だけの次期当主に、以前程の期待がされているとは思えない。


報道陣は僕を『氷の次期当主』と呼ぶようになった。


氷皇を思い出して気分はよくないけれど、その名の由来は…僕が笑みが凍り付いているかららしい。


僕のいない処で、勝手に僕のイメージと、ありえもしない業績があがっていく。


僕はただテレビの前に連れられるだけで、それがない時は…怪しい研究施設に入れられて…耐久実験の毎日。


形だけの人形は、ただ当主の思い通りに動けばいいだけで、後は"何か"の為の力の糧となればいいだけ。


至極単純明快な次期当主に、情は必要なく。


だからこそ、『氷の次期当主』は必然的な誕生でもあった。

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