シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

ありえねえよ。


犠牲精神の高い玲でさえ、櫂を救うためだとはいえ、"あの女"の無意識領域内であの女を抱くことに、激しい嫌悪感と抵抗を見せていた。


そんなもんだろ?

愛する奴が居るんだ、綺麗な身体でいたいと思うのはおかしなことじゃねえ。


しかも愛する奴は隣に居る。


手の届く距離に居て、汚辱された自分の姿なんて見せたくねえだろ?


それでも――


身体は汚れても…

想いは綺麗だと…見せつけるんだ。


心は純粋なのだと。

心は汚れることはないと。


その姿を見た時…

オレは泣きたい心地になってきた。


意味は違えど…オレの身体も汚れている。


それ故、芹霞から引こうとした俺。


芹霞に触れることは許されないと、

それは俺の罪故に許されないと、

だからこそ俺は…。


しかし朱貴は。

七瀬を守る為に自らの身体を犠牲にして、他人が吐き捨てた欲の汚物に塗れても…それでも七瀬の想いを貫いている。

想いは諦めようとはしていない。

むしろ、想うことによって自尊心を保っている。


俺とは逆の愛の示し方に…

俺は衝撃を受けた。


完全…無償の、朱貴の愛。


そういう愛の貫き方もあるのかと、思った。


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