俺様専務とあたしの関係


あたしと一緒…。


「だから、気付いていたの?あたしの事を…」


「そうだよ。変な強がりはオレと一緒。きっと、何か寂しさを抱えてるんだろうなって思ってたから」


抱きしめられながら、涙がこぼれ落ちてくる。


「今まで誰も、気付こうとしてくれなかったのに」


そんなあたしの髪を撫でながら、章人は優しく言った。


「そんな事はないよ。きっとみんな、聞けなかっただけだ」


やばいよ…。


涙よりも、気持ちが溢れてくる。


「蒼衣の事は心底好きで、やっと自分をありのまま、愛してくれる女を見つけたと思ったんだ」


「うん…」


こういう風に聞いて、やっぱり嫉妬はあるけれど、隠されるよりずっといい。


ちゃんと話してくれる章人に、嬉しさを感じていた。


「だから、蒼衣を失った時は自暴自棄になったし、これから先あいつ以上に、好きになれる女には出会えないと思ってた」


「羨ましいな…。蒼衣さんが。あたしもそんな風に誰かから愛されたい…」


「オレさ、蒼衣と出会って、大事なものを失う怖さを知ったんだ。じゃあ美月と出会って、何を知ったと思う?」


「え?あたし?」


何だろう…?


少しの間考えていると、横になっていた章人が起き上がり、代わりにあたしが下になる。


そして、見下ろしながら言ったのだった。


「失う“かもしれない”怖さだ」


「え…?」


「美月を失うかもしれない。今、一番怖いのはそれだけだ」


そして章人の唇が重なり、あたしたちは再び夢の世界へと落ちる。


ねえ、その言葉の意味を教えてよ。


心の中で浮かぶ台詞は、口から出てこない。


出てくるのは、ただひたすら章人を感じる甘い声だけだった。




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