俺様専務とあたしの関係


“荷物をまとめて来い”


半ば脅しに負けて、あたしは適当に荷物を詰め込むと、専務の車へ乗り込んだ。


「あの…、良かったんですか?誰かとご一緒だったんじゃ…」


それも女性と。


すると、ハンドルを握り車を走らせる専務は、まるで気にする様子もなく言った。


「別に構わないよ。元はといえば、今夜お前にフラれたから埋めた予定だし」


フラれたって…。


ご飯を断った事を言ってるのね。


だけど結局、こんな風になったわけだけど。


「本当に大丈夫なんですか?女性の方、怒ってません?」


「大丈夫だって。二人きりだったわけじゃないし」


そうなんだ…。


それでも、あたしの所へ飛んできてくれたのは、素直に嬉しかった。


「オレは、むしろ嬉しかったんだけどな」


「え?嬉しい?」


すると、専務はあたしに優しい笑みを見せた。


「そう。オレを頼ってくれたのが。普段は、全然寄せつけてくれないからさ」


寄せつけないって…、無理矢理キスをするくせに、そんな風に思ってるんだ。


変なの。


「あたし、情けないんですけど、頼れる人がいなくて…」


「頼れる人がいない?」


「はい…。実家の両親とは折り合いが悪いし、友達も少ないし…」


なんて、湿っぽい話をしてしまい反省。


こんな話なんて聞きたくもないわよ、きっと。


だけど、「そっか…」と呟いてしばらく黙った後、専務はこう言ったのだった。


「そんな中で、オレを頼ってくれたのは、やっぱり嬉しいよ」




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