俺様専務とあたしの関係


こんなの、ただの八つ当たりだ。


そう分かっていても感情が抑えられないまま、足早にその場を離れようとした時、


「待てよ。オレは本気で心配して言ったんだぞ?」


掴まれている腕を引っ張られた。


心配…?


「どうして、心配なんてするんですか?」


「え?」


上ずった声に、専務は怪訝な表情を見せる。


「無責任に、そんな事を言わないでください!」


自分でも最低に思えるくらい、メチャクチャな事を言っている。


これじゃまるで、ヤキモチを妬いてるみたいじゃない…。


だけど、もうこれ以上、あたしの心を振り回さないで欲しい。


専務の言葉や行動に、いちいち、ときめく自分がいる。


本当は、あたしの事なんて想ってもいないくせに…。


イヤなの。


本気で愛されていない、嘘の愛情なんて…。


すると、専務はあたしを見つめ、静かに言ったのだった。


「美月にとって、オレはそんないい加減に映ってるのか?」


「専務…?」


「本気で心配した。それは本当だ」


そして、あたしの唇にキスをした。


「専務!?誰かに見られたら…」


「お前が黙ってれば気付かれないよ」


息が出来ないほどのキスをされて、あたしはまた専務に心を揺らされた。


そして懲りもせず、その夜も体を重ね合ったのだった。


専務。もしかして、あたしを抱きながら、本当は蒼衣さんを抱いているんじゃないんですか…?




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