不良の有岡について。
私の話を聞いていないからだ。もしくは聞こえないフリ、か。
どちらにせよ、不快な気分にさせるには充分な理由。
「デキちゃったとか?」
口元が笑っていた。
頭に血が昇る。履いた靴が、アスファルトを押し付けるような音を立てた。
掌に爪が食い込む。痛いはずなのに、痛覚をどこかに置いてきたかのように、更に力を入れた。
この思いは、嫌悪を遥かに超えた、
殺意。
「…あんたじゃあるまいし。」
吐き捨てた声は震えない。心からの軽蔑。
「あたし、話があって来たんだよねえ。」