正義たるは偽善なり



「死ぬんですか」


彼はそう問うた。


その声音は真剣で、男をからかっている様子もない。


加えて子供のような無邪気さもない。



真面目な態度で青年が問う。



『お前は死ぬのか』、と。



その質問が特異に聞こえるのは、死するという行為が生き物の選択可能領域ではないからだ。



死ぬか否か…そんなものは、創造神の翼の元に、生き物たる我らに選択肢はない。



「魔術師〈神に背いた者〉に問う質問じゃねえな」


自嘲気味に男は笑い声を漏らした。


「だから最後のチャンスです」


「…チャンス?」



男は暗闇で遮られ、見えない筈の彼の顔を見上げた。


碧い両眼が爛と光っており、その様子は獲物を前にした獣同然。



< 2 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop