ショコラ~愛することが出来ない女~
15 独りで生きるの

 お盆休みが終わると共に、休みのつけを払わされるがごとく仕事が忙しい。

最近はいつもより念入りにメイクをする。
濃いルージュを唇にのせて鏡を覗きこむとまるで別人にでもなったような気分になれる。


泣いたりしない私。
誰かに頼ったりしない私。


そんな風になって生きていきたい。

こんな風に傷つけたり傷ついたりすることには、もう疲れてしまった。
だったら、もう何も望まず、一人で行きていこう。

幸い仕事に関しては充実しているのだから、今からでもがっちり貯金をすれば老後もそれなりには暮らせるだろう。
自分ひとりを養うのなら、それほど大変なことはない。



 カツカツとパンプスの音を響かせながら森宮ちゃんと2人、廊下を歩く。


「で、今日は表紙撮影があるんですけど、新しいモデルさんなので私も見に行こうかと思って」

「あら、じゃあ私も顔出そうかしら。連載小説の作家先生の所に挨拶に行く予定もあるから」

「そうしていただけると助かります」


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