a-pril
4月11日 それぞれの朝
<由紀>


春はやっぱり、眠くなる。
そう言い訳がましく思いながら、通勤途中の電車の中であくびをかみ殺す。

去年は新卒で、何もかもが真新しくて
だけど2年目ともなると、多くのものは色あせる。


だけど、今日からまた新しい子達と一年をはじめる。
そう思うとやっぱり、ワクワクする。


私、斉藤由紀は小学校教師。
今週末は高校の友達、奈津と久しぶりに飲もうって話もある。

確か、奈津はなんだっけ。
そうそう、なんとか療法士。
何度聞いても、忘れてしまう、ごめんね。

だけど病院での患者との出会いを生き生きと話してくれる奈津の顔は好き。
本当にそれは些細なことで、もし自分が奈津でもそんなこと気に止めないと思うけど
奈津だから気づくことで、奈津の視線でみてみれば
それは確かにキラキラ輝いてくるもので。

そんな奈津に対抗するように、自分も周りに転がる小さな幸せに目を向けようとしてしまう。
奈津はそんな私の話も、いちいちちゃぁんと聞いてくれる。

だから、大切な友達なんだ。


本当は3月に会う予定だった。
だけど、人事異動や準備などですれ違いになってしまい、
新学期が始まった今週、会うことになったのだ。


早く今週末になればいいのに、会いたいな。
そんなことを思いながら、また私はひとつ、あくびをかみ殺した。
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