今日で終わりにしてくれますか

彼女の彼との追憶








あれから少しだけ時間が過ぎて、私にとってもっとも嫌いで思い出深い、だけども大切な


白くて沈むような、思い入れの深い季節がやって来た



冬が、きた



「紅鈴」

「・・・・・・」

「紅鈴」


いつまで経っても返事をせず、呆然と窓の外を眺める私を百合亜が心配したような表情でじっと見つめる


その仕草はもう何十回も見てきたものだ

ごめんね、ごめん


やめたいけれど、やめられないの


「紅鈴。またアイツ、来てるから。早めにいってやりなさいよ」

「・・・・・うん」


アイツ、ね








身体を動かし、立ち上がろうとするとかたん、と小さな音を立てる机


カーディガンを羽織っていても、やはりいまの時期は寒いらしく、廊下へと出た私の首筋に僅かに当たる冷気が、もう一度私に季節を教えてくれるようだった

なんて、憎らしい


そんなことしなくていいよ。して、欲しくない


こんなこと思うなんて、本当に私は“ワガママ”だ


物思いに耽っていると、呼び出した相手が私に気づいたようだ


「よぉ、穂束」


ひらりと私に向かって片手を降る彼は、数日前に現れたあの男で、名前は神原達貴(かんばら たつき)と言うらしい




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