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赤と金の狼 sideヤス

案の定ヒロと付き合った、あの年上の女。

だからと言って、俺らの関係が崩れるわけで

も、雰囲気が悪くなるわけでもなく、俺はヒ

ロは仲良かった。

その時だって喧嘩は強く、その頃、ヒロは金

狼、俺は赤狼として有名になっていた。

しかし、中2だから、大した派手なことがで

きるわけでもない。

だから遊んでいるだけ。

喧嘩は売られたら買うけど、売らねぇ。

今日も俺は、暇だったため、バッティングセ

ンターに来ていた。

ホームランを打ち、商品をもらった俺は、ご

機嫌でアイスを食っていた。

「うまっ」

今日のアイスは新作で、ライチ味らしく、買

ってみたらメチャクチャ美味かった。

「よっ、ヤス!!」

いきなり肩を叩かれて振り返ると、ヒロと年

上のあの女の姿。

「おっ、ヒロ。また会ったな」

「俺ら、やること似てるからな」

「似てるか?」

「似てるよ、二人共」

本気ではなかったとはいえ、普通に元カレに

話しかけるお前はおかしい。

「バッティング、勝負しようぜ」

「いいな!やろうぜ。まぁ、ヤスはおかしい

くらいバッティング上手いからな~」

「んなことわかってるっつの。俺の方が、何

だってヒロより強ぇよ」

「調子乗んなって!!」

「本当のことだしっ!!」

「まぁ、やろうぜ」

結局は、俺が先にホームランを打ち、勝った

けど。

ヒロは電話がかかってきて、今はいねぇ。

だから、あの女と二人きり。

さっき、ヒロが言ってた。

今の女に本気で、今までみたいな扱いはして

ねぇらしく、優しくしている、と。

あんな奴のどこがいいか、俺にはわかんねぇ

けど、14歳にしては大人なヒロには、よく見

えるのかもしれねぇ。

「おい」

近くで男の怒ったような声が聞こえ、振り返

ると、あの女が男にナンパされてた。

「やめてよ!!彼氏いるんだからっ」

「どこにもいねぇじゃん。遊ぼうぜ」

男の方、ダサッ。

自分からナンパしねぇと、女ができねぇくら

いの、悲しい顔立ちしてんよ、お前ら。

ヒロの女だし、助けてやるか~。

「おい」

「あ?」

「こいつ、俺のダチの女だから。離してくん

ねぇ?ブサ男」

「あぁ?」

「だから、離せっつってんだよ」

「てめぇ、中坊のくせに生意気言ってんじゃ

ねぇよ」

「おい、こいつ赤狼じゃね?」

「だったら何だっつーんだよ」

「じゃあ、この女って金狼のじゃね?」

「いいから、とにかく離せや!!」

金狼とか赤狼とか、んなもん、どっちでもい

いんだ。

ヒロの女。

ただそれだけだし。

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