ルージュはキスのあとで




「それにしてもさ。似てないよね」

「へ?」



 なんのことだかわからなかった私は、彩乃をジッと見つめる。

 そんな私の視線に気がついたのだろう。
 彩乃は、長谷部さんが写っているページと、進くんが写っているページを私に見せた。



「進さまと京さま。双子の兄弟なんでしょ?」

「う、嘘!!」

「本当」



 なにかの雑誌にふたりの対談記事があって、そんなことが書いてあったらしい。
 ということは、本当のことなのか。

 でも、どうしても腑に落ちない。


 
「でも苗字が違うよ?」

「ああ。二人の両親って、京さまたちが小さいころに離婚しているから」

「……」

「父親に引き取られたのが京さま、母親に引き取られたのが進さまよ」

「……そうなんだ」



 それでもやっぱりあんまり似ていないと思うのだけど……。

 そう彩乃に言うと、二卵性双生児ってやつらしいよ、とのこと。
 たしかに、一卵性双生児よりは、二卵性双生児のほうがあまり似ないとは聞いたことがあるけど……。

 彩乃はコーヒーの紙コップを手にしながら、雑誌を見つめる。



「有名な話よ? まぁねぇ……両親どちらも有名人だしね」

「そうなの?」



 それも初耳だ。
 驚いて目を見開いている私を見て、彩乃はおかしそうに笑った。



「父親の方が、シャイニングの社長だよ」

「え!? シャイニングってよくCMとかやってる、化粧品会社の?」

「そうそう。で、母親の方が、たくみビューティーサロンの社長なのよ」

「って、エステで有名なところだよね?」

「そう。どちらも有名人なのよ」



 ふーん、と返事をしながら雑誌をみつめる。

 進くんと長谷部さん。言われればどことなく面影があるけど……そうか、双子なんだ。

 それにしても顔もそうだけど、性格も真逆なんだな、あのふたり。

 そう思うと、なんかおかしくなった。




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