ルージュはキスのあとで


「今日のメンツで、真美に酷いこというヤツはいなかった?」

「い、いなかったと思うけど?」

「今日のメンツは、気配りが足りない。ん、ダメ」

「そ、そうですか」



 彩乃によって今日のメンズは、すべてダメというレッテルがが貼られてしまったらしい。

 時計を見たあと、彩乃はにっこりと笑った。



「私も帰る」

「は? 幹事がいなくてどーするのよ!?」

「もうお開きの時間だし。あのメンツで二次会なんて行くつもりなーし」

「……」

「真美のよさがわからない男たちなんて興味なし。そんな男どもには、私の友達だって触れさせやしない」



 フンと鼻息荒く宣言をする彩乃は、「そうと決まれば!」と言って部屋に入っていってしまった。

 会費を受け取ってもらえなかったので、とりあえずは彩乃が出てくるのを待っていたのだが、部屋から彩乃の声が聞こえてきた。



「今日はこれでお開きにしまーす。私たち、門限がありまして、急いで帰らなくちゃいけなくて……いえ、送っていただかなくて結構ですよ? 先ほどお話したとおり、私たち4人は中学の同級生。みんな同じ駅で降りますので、ご心配なく」




 では~と、言う彩乃の声とともに彩乃のお友達も出てきてしまった。



「ちょ、ちょっと。いいの? 彩乃。それにみなさんも……」



 オロオロとしている私を他所に、彩乃とそのお友達は平然なものだった。




「あら、いいのよー真美さん。今日のメンズ好みの人いなかったし」

「女の子全員を楽しませることができないメンズなんて、興味なし」

「そうそう。みんな抜けたがってたから真美さんが気に病む必要はなーしよ」



 みんなかわいい顔して、なかなかに毒舌だ。


 彩乃がほかにも3人いる、そんな感じがした。

 類は友を呼ぶ、とはこのことを言うのだろうか。

 4人に押されるように店を出てくると、彩乃の友達たちは私ににっこりと笑ってきた。



「ってことで、私たちは駅が一緒だから帰るねー。じゃ、真美さん。また!」

「あ、うん。また……」



 ヒラヒラと手を振って、潔くその場をあとにする彼女たちをあっけに見ていると、彩乃が私の肩をポンと叩いた。



「ってことで、真美。今から飲みなおそうよ」

「って、彩乃は皆んなと帰らなくていいの? 路線一緒なんでしょ?」


 慌てて彩乃を皆んなが歩いていく方向に背中を押すと、彩乃はケラケラと笑った。



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