*春、それは出会いと別れの季節*
「もしかしてさっきの聞いてたの!?」

 人がいるとは思わなかった私はその少年に向かって大声で叫んだ。

「あぁ、聞いてた」

 その少年は清々しく前髪をかきあげながら桜の木にもたれかかっている。

「ひょっとして……最初からいました?」

「お前がここに来る前からいたな」

 知らなかった

 ……この人って影薄いんだね
そんな事を思っていると

「影薄くねーよ
お前が鈍感なだけだ」

 私の心の中を読まれた。

「私って鈍感じゃないよ!
結構敏感な方だと友達に言われる」

「ふぅーん、そうか
ところでお前の名前は?」

 彼は適当に返事をし
私の名前を問いかけてきた。

 適当に返事をした事が私は少し腹が立ち

「人の名前を聞く前に自分から名乗るのが礼儀というものじゃない?」

 嫌みたらしく言ってやった。

「……お前面白い奴だな
気に入った」

「……?」

 彼は鼻で笑いながらボソッと何かを呟いているような気がした。

「俺の名前は三原宙斗
これでいいだろう?」

「うん、これでいいよ」

 三原宙斗か

 なんかカッコイイ名前

「名乗ったからお前の名前を教えろよ」

 三原宙斗という少年は私の方を見ながらそう言う。

 貴方に教える名前なんてないと言いたいけど
流石にこれは怒るんじゃないかと思い言うのはやめた。

「私の名前は桜木美鈴」

 私は短く名前を名乗り彼の方を見たら

「だから、桜の木に話しかけてたのか」

 彼は俯きながら笑っていた。
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