レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「伊織のタイプを聞いた時に言ってたんだよ、覚えてない?」


「…………」



俺は小さく首を振った。

そんなこと、言った?
覚えてない。


確かにあの時の俺は、自由が欲しくて、俺を連れ出してくれる人なら誰でもよかった。



………それがあの結果なわけだけど。




「普通言わないでしょ、そんなこと。だから、ずっと覚えてた」


「……レンタル彼氏をやってる時、自由なんかなかったんだ」


「嫌なら、逃げたらよかったんじゃないの…?」



不安そうに聞く泉の手を強く握る。

自由。
それはあってないようなモノだった。



「……Sランクにはチップが埋め込まれてて、どこにいるか把握出来たんだ」


「……っ!」



息を飲んで、俺を見つめる泉。
そりゃ、そうだ。

どこの世界に消えさせたくないからと、人の体にチップなんか埋め込む奴がいるんだ。



本当、想像もしないだろう。


俺だってしていなかった。



「…何、それ…」


泉は信じられないのか、声を震わす。

いいんだ、何も思わなくて。



だって、それはきっと俺の罪だから。
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