悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~


あのときは玲士の印象は最悪だったが、今思うとあれは灯里の緊張をほぐすためにわざわざ声をかけてくれたのかもしれない。

非情に好意的な見方をすれば、だが。


昔のことを思い出ししばし感傷に浸っていた灯里に、山岡課長がビールを注ぐ。


「あっ、すみません課長……」

「まあまあ。飲みなよ灯里ちゃん」


山岡課長はだいぶ出来上がっている様子だ。

灯里は恐縮しながらグラスを手にした。


「ほらほら、こっちに焼き鳥もあるよ」

「ありがとうございます」


山岡課長は焼き鳥やらから揚げやらサラダやらを灯里の前に並べてくれる。

さっそく焼き鳥に手を伸ばす灯里に山岡課長は言った。


「しかし、君と水澤が付き合うなんてね~」


山岡課長の言葉に、灯里はウッと箸を止めた。

あの日突然早退してしまった手前、後日灯里は玲士とのことを山岡課長に報告していた。

玲士は既に退職しているので社内的には特に問題はないのだが……。


「泣かされてないかい、灯里ちゃん?」

「だ、大丈夫です、あはは……」


――――別の意味で泣かされたことはあるが。


< 126 / 174 >

この作品をシェア

pagetop