悪魔のようなアナタ ~with.Reiji~


「み、みず……じゃない、玲士っ」


慌てふためく灯里の横で、玲士は近寄ってきた店員にガラスケースの中を指差した。

店員は玲士の美貌に一瞬息を飲んだ後、にこりと笑って二人を見た。


「あの中の指輪を見せてください」

「はい、畏まりました。少々お待ちくださいませ」


店員は一礼し、スーツの胸ポケットから鍵を取り出してガラスケースを開ける。

店員は手早く青いビロードの上に並んだ指輪を取り出し、手にしていたトレーの上に並べた。


「お客様、ではこちらへ」


店員の声に、玲士はカウンターの方へと歩き出した。

引きずられるように灯里も続く。

無理やりカウンターの前の椅子に座らされた灯里の前に、トンとトレーが差し出される。

トレーの上にはシンプルで綺麗な指輪が7個ほど並んでいる。


「好きなのを選んで」

「……え?」

「さ、早く」


玲士の声に急かされ、灯里は慌てて指輪を見た。

どれも綺麗で目移りするが、ひときわ目を引いたのは小さいエメラルドが埋め込まれたシンプルで綺麗な指輪だった。

エメラルドは5月生まれの灯里の誕生石でもある。

指先でそっと取り上げると、指輪は灯里の掌の上で繊細な輝きを放った。


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