愛を教えて ―番外編―
だが万里子と結婚して……卓巳が見た目より、おそろしく不器用だと知った。


「しかしなぁ……万里子様も、よりにもよって、あの美馬と会わなくても」

「ちょっと話をしてすぐに帰るつもりだったのよ。まさか、卓巳様と鉢合わせなんて……。普通はそこまで想像しないもの」
 

雪音の予想では、万里子のほうも驚いたことだろう。

というか……卓巳に知られたらまずい、と思いながら会いに行ったのだと察する。卓巳は余計なことを言わず、黙っていればよかったのだ。そのときは万里子のほうから『ごめんなさい』と言ったに違いない。

仕事では完璧に計算ができる卓巳なのに……そんな雪音の言葉に、宗もうなずいた。


「まあ、そうだろうな。でも、その駆け引きができないところに万里子様も惚れたんだろうし……。第一、お前だってそうだろう? 俺が中澤あたりと仕事以外で会ってたら、ホテルのロビーにいただけでも怒るんじゃないか?」

「あのね……万里子様はどっかの下半身無節操オトコとは違うでしょ! それに、幼稚園行事の件で父兄に会うのと、昔の女と会うのをごっちゃにしないでくれる!?」

「はい、すみません」


しゅん、とした宗を横目に雪音は立ち上がる。


「さあ! それじゃ今日は、卓巳様の焼いた焼きソバを食べに行きましょうか」


と、そのとき……。


「ママぁ! 和ちゃんが藤ちゃんのくつ下とったぁ~」


娘たちを怒鳴りつけるため、雪音はスーッと息を吸い込んだ。


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