愛を教えて ―番外編―
「待って、卓巳さん。それは、夫婦それぞれなんだから、決め付けなくても」


卓巳は万里子を庇ってくれているのかもしれない。でも、この場に愛実を助けてくれる夫はいないのだ。

万里子は自分がズルをしているようで、居た堪れない気持ちになった。


「決め付けているわけじゃない。私も親には恵まれていない。美馬より短い期間ではあったが、施設で暮らしたこともある。だから、わかるんだ。自分を頼ってくれる誰かの存在がどれほどありがたいか。誰かを守る力が、自分の存在価値になるんだ」


卓巳の言葉が真実なら、愛実は藤臣の存在を否定してしまったことになる。

愛実もそう思ったのか、


「やっぱり……私が全然ダメだから……藤くんに迷惑ばっかりかけてるから」


手で顔を覆い、泣き崩れそうになった、そのとき、


「いや、他のことはともかく、女心には私の倍も敏いヤツのことだ――」


卓巳は言葉を区切り、万里子と愛実の後方に視線を向け、ニヤリと笑う。



「――なんで愛実が泣いてるんだ! 説明しろ、藤原!」


息を切らせて駆けつけてきたのは、美馬藤臣だった。   

 
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