愛を教えて ―番外編―
藤臣が美馬の本社を追われ北海道の小さな会社に出向したとき、自身が所有する会社の代表権を瀬崎に譲り、経営を任せたという。

ところが、任された瀬崎にとって、それは苦難の道だった。何より、藤臣の実父が、自分に逆らった息子を潰そうとやっきだったからだ。瀬崎が代表となった会社から債権をすべて引き上げさせ、系列銀行からのあらゆる融資を絶った。

運転資金すらままならなくなったところに、援助の手を差し伸べたのが……。

だからこそ卓巳は瀬崎のことを『経営者としての才覚もある』と評価したのだ。 


藤臣の言葉を聞き、結人や大樹も嬉しかったらしい。「ほんとうに?」と目を輝かせている。
 

「お父さんはいつだってフェアだぞ!」


息子たちに尊敬のまなざしを向けられ嬉しかったのか、エプロンのピーターラビットまでもが胸を張って見える。


「でも……僕たちが転校しないと、ママが……」


北斗の後ろで大地がポツリと言った。


「ママは平気よ。だって、パパが来てくれたんですもの。藤原の応援団が多いなら、余計にママたちが頑張ってパパの応援をしないとね」


愛実がにっこり笑うと、美馬兄弟も安堵したように笑う。


「さあ、そろそろ飲食コーナーもオープンよ! パパたちの焼きそばコーナーの隣にはフランクフルトや焼き鳥、チキンナゲット、カレーまであるんだから。――お父さんたちを見習って、ケンカはなし! みんなで仲良く回るのよ」


万里子の声に子どもたちは一斉に手を挙げて「はーい!」と返事をした。

 
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