愛を教えて ―番外編―
「瀬崎はいい奴だろう?」


藤臣は少し意地悪そうに笑って卓巳を見た。

卓巳の目算が外れ、瀬崎はしっかり会社を建て直した後、見事なほど潔く藤原のロープを切った。

ちょうど卓巳の傍から、その手の工作に長けた宗が離れていた時期だったので、仕方なかったのかもしれない。


「ああ、優秀な男だ。規律正しくて、お前の秘書に似合いだ」

「お互いに使える秘書を持ったってことだな」

「……そういうことにしておこう」


二秒ほどの沈黙は、宗が知ったら不満に思うかもしれない。


(いや、宗のことだ。それこそ、お互い様と笑うだろうな)


静かになった卓巳をどう思ったのか、藤臣のほうが話しかけてきた。


「ひとつ、聞いておきたいことがあるんだが……」

「なんだ?」

「お前……十七年前の合コンでお持ち帰りした女の件で、まだ怒ってるのか?」


卓巳はビールテイスト飲料が気管に入り、思いっきり咽る。


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